たかきろぐ

「自動運転」「情報系大学」「雑記」をだらだらと書いています

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街の移り変わり

僕は大阪の飲食街のはずれに住んでいる.一度街を離れて別の年に越したが,去年の春にまた同じ街に戻ってきて,合わせて2年をこの街で過ごしている.

街の様変わりは早く,過ごした2年間で色々な店が消えては,できた.

馴染みの店も数件あるが,今日はそのうちの一件がなくなっているのに気がついた.

 

その店は世襲制で,店名や内装を買えずに20年以上続き,雑居ビルの空中階に立地していた.

非常に落ち着いた雰囲気で,2代目の女性店主は会話していて心地の良い人だった.

ワインのうまい店だった.

 

最寄りの駅のプラットフォームから,くすんだ色の大きな看板が見えていたのだが,今日見てみると看板はビビッドな色合いの月極駐車場のものに変わっていた.

なぜ毎日見る風景にとけこんだ変化に気がつかなかったのかが不思議だ.

 

新しくできた店の看板が目に入った時,店主がどこかで新しく店を出しているのか,店に付いていた飲んだくれの客はどこに流れたのか,当時の店内の風景を思い出しながら少し立ち止まっていたのだが,思い出にふける中でカッと体が熱くなり,ドキドキとした.

 

店の中で僕が非常に気に入っていたものがある.長い一枚板のカウンターだ.木材は時間がたつと乾燥と共に形が変わる.反ったり,縮んだり,ひび割れたりすることがある.ただ,節の部分は硬くて形が変わりにくい.だから年季が入った天板の節の部分は周りに比べて少し突起していて,グラスが引っかかる.

この節の引っかかりは,店が長く続いていた歴史のようなものなのだ.

 

店が変わったことで,この天板がなくなってしまっているのでないかと不安になった.長く続くものが良いわけではないが,少し感傷的になった.

 

たまらずに店に入ってみると,中は落ち着いたオーセンティックな雰囲気から,蛍光灯で明るく照らされ,流行りのアロマの香るカジュアルな空間になっていた.

 

一瞬,不安になったが,カウンターに目をやると,一枚板のカウンターはそのままだった.

新しい店の店主も,カウンターの出す雰囲気を良いと思ったのだろう.とても嬉しかった.

 

一杯飲んで帰ろう.

 

そう思ったが,メニューに好みのものがなかったので,そのまま飲まずに帰った.